クロワッサンの層について考える
30年前、フランスの安ホテルで食べた、つぶれたクロワッサン
クロワッサン、お好きですか?今から30年近く前(たしか1993年1月)はじめてパリに行った時に食べたクロワッサンは衝撃的な美味しさで、今でもあの時の味を上回るクロワッサンには巡り合えていません。
実際にはそれ以降も何度もフランスを訪れて美味しいクロワッサンを食べているのですが、30年前の自分がクロワッサンというパンを食べた経験が少なく、今より舌が肥えていなかったためにその衝撃が脳裏に焼きついているということだと思います。
こんな美味しいパンがあるんだ!さすがフランスは違う!!という感動に興奮し、以後フランスやフランス菓子に興味を持った最初の出来事です。
今思うと、そのクロワッサンは焼きたてでもなく、安ホテルの朝食に提供された、上から何かに押されてつぶれてしまった高級感ゼロのクロワッサン。まわりのサクサク感もなく、ただ噛むとバターがじゅわっと口の中に広がったのを覚えています。
おそらくクロワッサンに感動したのではなく、ただただバターの美味しさに感動したのかな。。。フランスのクロワッサンは、外側がサクっ、中がじゅわっと芳醇なバターの香りが一般的です。
ハラハラと崩れる層はクロワッサンじゃない!!
一方、当時の日本のクロワッサンは、パリで食べたクロワッサンとはまったく違い、外側はもちろん、中までパリパリしていてパンというより、パイ生地を食べているような食感でした。雑誌ではパンの特集記事も多く、クロワッサンは層が多いほどハラハラと崩れて美味しいという内容の記事がほとんどでした。
たしかにハラハラ崩れ落ちる層はいかにもフランスっぽい?のですが、バターの味があまり感じず、私的にはちょっと違うんだよなーと食べるたびに思っていました。
この層というのは、パイ、クロワッサン、デニッシュ生地の小麦粉とバターの層で、デトランプと呼ばれる小麦粉と水で作った生地でバターを包み、伸ばして折ってを繰り返す作業をすることで生まれます。折り回数が増えれば必然的に層が増えるのですが、あまりに層が多いと小麦粉とバターが一体化してしまい層がなくなってしまうこともあります。
ようやくバターに慣れた日本人
最近、フランスのクロワッサンのように、中がじゅわっとしたクロワッサンが注目されています。一般的にクロワッサンは3つ折りを3回(3×3×3=27層)という工程が多いようですが、4つ折りを2回(4×4=16層)というお店も増えています。ただ、折り回数が減ると、バター感が増すので、重たいと感じる方も多いとか・・・
なるほど、30年前はバターを重たいと感じる人が今以上に多く、パン屋さんが少しでも軽くするためにわざと層を多く、日本人の口に合わせていたんだ。そしてようやく、欧米の食事が増えバターに慣れた日本人が、フランスと同じクロワッサンを美味しいと感じる世の中になってきたんだ。そんな風に考えます。
バターたっぷりなヴエノワズリーを探求するために
さて前置きが長くなりましたが、夏の間お休みしておりました、テーマ別コース「バター香るリッチパン」クラス、少し内容をリフレッシュしてレッスンを再開します。現在お申込み受付中です。「バター香るリッチパン」で実習していただく、ブリオッシュ、クロワッサン、デニッシュ類は、フランスではケーキ屋さんのパンと言われ、ブーランジェリー(パン屋さん)で売っているものより、上質なバターをたっぷり使用されていると人気です。
私がお菓子を習ったル・コルドン・ブルーでもお菓子のコースにブリオッシュとクロワッサンの授業がありました。またフランスの料理学校では、これらのパンは「ヴエノワズリー」というクラスで、お菓子でもパンでもない別クラスに属しています。スイートリボンでは、クロワッサンは3つ折り3回、デニッシュは4つ折り2回で実習します。が、3つ折り3回、4つ折り2回の違いがわかる実験もやってみると面白そうなのでどこかに組み込みます。
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